テンは、可愛らしい外見とは裏腹に、住宅や農作物に深刻な被害をもたらす害獣として近年注目されています。この記事では、テンの生態や被害状況を詳しく解説し、被害を防ぐための徹底対策をご紹介します。
テンの生態と特徴をご紹介します
テンは、主に森林地帯に生息する小型の肉食動物で、イタチ科（Mustelidae）に属します。世界各地の森林に生息する様々な種があり、その生態や特徴は種によって異なりますが、共通する基本的な特性を持っています。
日本で生息しているテンの種類について
日本には主に2種のテンが生息しています：ニホンテン（ホンドテンとも呼ばれます）とツシマテンです。これらは、生態や分布において異なる特徴を持っておりますので以下にてご紹介していきます。
ニホンテン（ホンドテン）
ホンドテンは、北海道、本州、四国、九州に広く分布している日本固有のテンです。森林地帯を好み、特に樹上での生活に適応しています。その毛皮は美しく、過去には狩猟の対象となっていました。現在では、その生態や習性がより深く研究され、生息地の保全と人間との共存の方法が探求されています。
ツシマテン
ツシマテンは、対馬に特有の亜種で、国の天然記念物に指定されています。対馬の特定の森林地帯にのみ生息しており、その分布は限られています。ツシマテンは、ニホンテン（ホンドテン）よりもやや小さく、生態系内での役割や習性が研究の対象となっています。狭い地域に限られた分布のため、生息地の変化や環境破壊に弱く、保護と生息地の保全が特に重要視されています。
日本において害獣として扱われることがあるのはニホンテン（ホンドテン）が多いです。
ニホンテン（ホンドテン）が、害獣」とみなされる主な理由は果樹園で果物を食べたり、養蜂場でミツバチを捕食するなどの被害があるためです。
ニホンテン（ホンドテン）の基本的な生態
ニホンテン（ホンドテン）の基本的な生態について詳しく表にしてまとめましたので見ていきましょう。
ニホンテン（ホンドテン）の活動パターン
ニホンテンは夜行性ですが、夕暮れ時にも活動を開始します。昼間は巣穴や岩陰で休息し、夜になると活発に活動し、単独で食物を探します。
オスとメスはそれぞれ縄張りを持ち、その範囲内で生活します。縄張りの大きさは数キロメートル四方に及び、ニホンテンは1日あたり数キロメートル移動し、縄張内を巡回します。行動範囲は季節や生息地によって変化します。
| 活動時間 | 夜行性（薄暮性） | 夕暮れ時にも活動を開始することがあります。 |
| 社会性 | 単独行動 | 群れを成すことはなく、単独で生活します。 |
| 縄張り | オス：約4.8平方キロメートル、メス：約2.4平方キロメートル | 食物の豊富さや生息地によって変化します。 |
| 移動距離 | オス：1日平均約5.5キロメートル、メス：1日平均約2.8キロメートル | 季節や生息地によって変化します。 |
| 行動範囲 | 季節や生息地によって変化 | 繁殖期はオスの方が広く移動します。 |
ニホンテン（ホンドテン）の食性
ニホンテンは雑食性で、季節によって豊富な栄養価を持つ様々な食物を食べます。優れた嗅覚と聴覚で獲物を探し、木登りや泳ぎも得意なので、多様な場所から食料を確保します。余剰の餌は後で食べるためや冬眠に備えて隠しておくこともあります。
| 食性 | 雑食 | 果物、種子、昆虫、小型哺乳類、鳥の卵や幼鳥など、様々な種類の食物を食べます。 |
| 主な食物 | 季節によって変化 | 春や夏は果物や昆虫、冬は小型哺乳類を主に食べる傾向があります。 |
| その他の食物 | 動物の死骸、キノコ、魚 | 生息地や個体によって食べる食物は異なります。 |
| 採食方法 | 嗅覚と聴覚を頼りに獲物を探す | 木登りや泳ぎも得意で、様々な場所から食物を探します。 |
| 餌の保存 | 余剰の餌を隠しておくこともある | 冬眠前に餌を貯めておくこともあります。 |
ニホンテン（ホンドテン）の繁殖と育児
ニホンテンは年1回、主に春に繁殖期を迎え、約30〜50日の妊娠期間を経て2〜4頭の子供を出産します。オスは子育てにほとんど関与せず、母親が1頭で約6ヶ月間、巣立ちから独立まで育児を行います。
| 繁殖期 | 春 | 1月〜4月頃が繁殖期です。 |
| 妊娠期間 | 約30日から50日 | 個体差があります。 |
| 出産数 | 2〜4頭 | 1〜6頭のこともあります。 |
| 性成熟 | オス：約1歳、メス：約8ヶ月 | 個体差があります。 |
| 発情期 | メス：約1年に1回、4〜7日 | 個体差があります。 |
| 繁殖形態 | 一夫一妻 | オスは複数のメスと繁殖することもあります。 |
| 育児 | 母親 | オスは子育てにほとんど関与しません。 |
| 育児期間 | 生後約6ヶ月 | 個体差があります。 |
| 巣立ち | 生後約2ヶ月 | 個体差があります。 |
| 独立 | 生後約6ヶ月 | 個体差があります。 |
生息地域
ニホンテンは、北海道から九州までの広い範囲に分布していますが、沖縄県を除く日本全国の森林地帯に生息しています。特に深い山林や人里離れた場所を好みますが、人間の活動の影響を受けやすい地域でも見られます。
テンによる被害
ニホンテン（ホンドテン）は、その生態活動が時として人間の農業や家庭環境に影響を及ぼすことがあります。ここでは、テンによる具体的な被害事例と、それらが農業や家庭環境に与える影響についてご紹介します。
農業への影響
果樹園での被害
ニホンテンは果物を食べることがあり、果樹園におけるリンゴ、ナシ、ブドウなどの被害が報告されています。彼らは一度に多くの果実に噛みつき、食べかけの果実を残すことが多く、その結果、収穫可能な果実の量が大幅に減少します。
養蜂業への影響
ニホンテンは、ミツバチの巣を荒らし、ハチミツや幼虫を食べることがあります。これにより、養蜂業者は生産量の減少や、場合によってはミツバチの群れが壊滅することもあります。
家庭環境への影響
家禽への攻撃
農家や一般家庭で飼育されている鶏やウズラなどの家禽が、ニホンテンによる攻撃の対象になることがあります。夜間に侵入して家禽を捕食し、飼育している家禽の数に大きな損害を与えることがあります。
家庭のペットフードへの影響
屋外に置かれたペットフードは、ニホンテンを含む野生動物を引き寄せることがあります。これにより、家庭内のペットと野生動物との間で争いが起こる原因となります。
テンによる被害防止策
ニホンテン（ホンドテン）や他のテンによる被害を最小限に抑えるための予防策や対策方法は、具体的な状況に応じて様々ですが、ファーストの経験談から考える効果があった方法を以下に紹介します。
1. 物理的障壁の設置
果樹園へのネット張り
果樹園での果物被害を防ぐため、収穫期には果樹をネットで覆います。これはテンが果実にアクセスするのを物理的に防ぐ効果的な方法です。
鶏舎や小屋の強化
家禽を守るために、鶏舎や小屋に強固な金網を使用し、隙間がないようにします。特に屋根部分や換気用の窓も保護することが重要です。
2. 侵入防止策
電気柵の設置
農地や特定のエリアへのテンの侵入を防ぐために、電気柵を設置することが有効です。適切な高さと電圧で、テンが侵入することを抑止します。
ゴミ箱やペットフードの保管
テンが食料を求めて住宅エリアに侵入するのを防ぐため、ゴミ箱はしっかりと蓋を閉じ、ロックがかかるタイプのものを使用します。また、ペットフードは屋内で保管し、夜間には外に出さないようにします。
3. 生息地の改善と代替食源の提供
生息地の改善
テンが適切な生息地を失わないよう、森林の保全活動に取り組むことも重要です。自然な環境が保たれることで、テンが人里に下りてくる頻度を減らすことができます。
代替食源の提供
一部地域では、テンが農作物や家禽に手を出さないよう、森林内に果物などの代替食源を提供する試みが行われています。
まとめ
以上、ニホンテン（ホンドテン）についてご紹介していきました。
近年、ニホンテンは生息地の減少や狩猟圧力により個体数が減少しており、環境省レッドリストでは準絶滅危惧種に指定されております。
彼らの生態に配慮した方法でテンと共存ができれば良いと思います。
